顧問の始め方2026-08-06監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

顧問の「最初の1社」獲得術——営業未経験からの実務書

この記事の要点

「顧問料の相場も契約書の雛形も分かった。でも、そもそも最初の1社をどうやって見つけるんですか」——面談でいちばんよく聞かれる質問です。

結論から言うと、顧問業の「最初の1社」は、営業力の強さではなく、人脈の棚卸しと課題の言語化力で決まると僕は考えています。派手な営業トークは要りません。むしろ、これまでの仕事で築いた関係を丁寧に振り返り、相手の困りごとを自分の言葉に翻訳し直す作業のほうが、成約に効いてきます。この記事では、獲得ルートごとの体感値、30日で動くための実務手順、提案書の書き方、初回面談で崩れやすいパターンとその立て直し方、そして最初の契約条件の考え方について、順番に整理していきます。

0. まず結論

最初の1社を取るための道筋は、大きく3つに分かれます。元同僚や取引先からの紹介、顧問マッチングサービスの活用、そしてnoteやSNSでの発信です。僕の体感値で言うと、面談化後の成約率は紹介が最も高く3割前後、マッチングサービスは1割前後、発信は1割未満だが単価が上がりやすい、という傾向があります。どのルートを選ぶにせよ、提案書は経歴の丸写しではなく相手企業の課題への翻訳であることが前提になります。そして最初の契約は、単価より「更新時に見直せる条件」を確保できているかのほうが、長い目で見ると重要です。

1. なぜ「最初の1社」が一番重い壁なのか

転職活動と顧問契約は、似ているようで意思決定の構造がまったく違います。転職であれば週5日フルタイムで働くので、企業側は数ヶ月かけて成果を確認できます。ところが顧問契約は、多くの場合月に数回の稼働です。成果が見えるまでの密度が薄いぶん、企業側からすると「本当にこの人に払う価値があるのか」を判断する材料が少ないまま契約を決めなければなりません。ここに、実績ゼロの顧問候補者が最初にぶつかる壁があります。

経歴書には40年分のキャリアが詰まっていても、「顧問として」の実績はゼロからのスタートです。だからこそ、最初の1社は実力ではなく信頼の蓄積で決まりやすい、というのが僕の実感です。信頼の蓄積とは、これまでの仕事ぶりを知っている人からの紹介であり、それがない場合は、経歴を相手の課題に翻訳する言語化力で代替するしかありません。実際に相談を受けた方の中には、退職後半年間まったく声がかからず焦っていたところ、以前の部下だった人が転職先の社長に「元上司に相談してみては」と一言添えてくれたことがきっかけで契約に至ったケースがあります。本人はその部下と特別なことをしたつもりはなく、日々の仕事を丁寧にこなしていただけだったそうです。信頼の蓄積は、こうした地味な積み重ねの延長線上にしかありません。

2. 獲得ルート別の体感値——紹介・マッチング・発信をどう使い分けるか

実際に僕が相談を受けてきた方々の動き方を振り返ると、ルートごとにおおよそ次のような傾向があります。数字はあくまで体感値で、公的な調査値ではありませんが、目安として参考にしてください。

獲得ルート体感成約率(面談化後)リードタイムの目安向いている人
元同僚・取引先からの紹介3割前後1〜2ヶ月現役時代の関係を良好に保ってきた人
顧問マッチングサービス経由1割前後2〜4ヶ月経歴を数字で語れる人
note・SNS等の発信1割未満(ただし単価は上がりやすい)半年〜1年専門分野を言語化して発信し続けられる人

ある製造業出身の方は、役職定年から3ヶ月ほど経ったころ、以前取引のあった取引先企業の社長から電話をもらい、そこから顧問契約に至りました。理由を聞くと「退職の挨拶状に、これから何をしたいか一行だけ書いてあったのを覚えていた」とのことでした。紹介ルートの強さは、こうした些細な発信の積み重ねが後から効いてくる点にあります。逆にマッチングサービスは、人脈がゼロからでも土俵に上がれる代わりに、経歴を数字で語れないと面談すら通らないことが多い、というのが実感です。ある方はマッチングサービスに登録してから半年間、書類選考すら通らずにいましたが、経歴書の表現を「生産管理を担当」から「不良率を8%から3%に下げた工程改善を主導」と数字入りに書き換えた途端、翌月に2件の面談が組まれました。3つのルートは排他的ではなく、紹介先を待ちながらマッチング登録と発信を並行させる方が、結果的に最初の1社にたどり着く速度が上がると感じています。

3. 提案書は「できること」ではなく「困りごとの翻訳」で書く

最初の提案書でよくある失敗は、経歴書をそのまま貼り付けてしまうことです。「生産管理の経験が20年ある」と書いても、相手企業からすれば「それが自社の何を解決するのか」が分かりません。ここで必要なのは、自分の経験を相手の言葉に翻訳する作業です。

たとえば後継者不在に悩む製造業であれば、「生産管理の標準化ができます」ではなく、「属人化している工程を、誰が担当しても同じ品質で回せる状態にします」と書き換える。相手企業が抱えている痛みに、自分の経験を接続し直すイメージです。この翻訳がうまくいくと、初回面談での質問の質が変わります。「あなたは何ができますか」ではなく、「うちのこの部分、具体的にどう進めますか」という会話になっていきます。提案書は1社ごとに書き直す前提で考えたほうがよく、使い回しの一般論を並べた提案書は、相手企業の担当者から見ればすぐに分かってしまうものです。翻訳作業には1社あたり1〜2時間ほどかかりますが、この時間を惜しんで使い回しの提案書を送った結果、初回面談すら組まれなかったという相談を何度も受けてきました。

4. 初回面談で崩れがちな3つのパターンと立て直し方

初回面談で成約を逃すパターンには、いくつかの型があります。僕が見てきた範囲で多いのは次の3つです。

1つ目は、経歴を語りすぎて相手の課題を聞けないパターンです。40年分のキャリアを持つ方ほど陥りやすく、気づけば持ち時間の大半を自己紹介に使ってしまいます。対策はシンプルで、最初の10分は質問に徹し、相手の課題を具体的な固有名詞と数字で聞き出すことです。

2つ目は、稼働条件を先に出しすぎるパターンです。「週1日、月◯万円で」と条件面から入ってしまうと、相手はまだ課題への理解を確認できていないのに、値段だけで判断せざるを得なくなります。条件の話は、課題への理解が伝わった後に回すほうが通りやすいというのが実感です。

3つ目は「なんでもやります」と言って専門性が伝わらないパターンです。柔軟性を示したつもりが、逆に「結局何の専門家なのか分からない」という印象を残してしまいます。対応できる範囲は広くても、最初に打ち出す専門性は一つに絞ったほうが、結果的に信頼されやすいと感じています。ある方は初回面談で人事・生産・海外営業の3分野を一度に提案し、結局どれも刺さらずに見送られました。次の面談では採用領域一本に絞り、3週間後に契約に至っています。

面談で見送られた場合、すぐに再アプローチするのは逆効果になりやすいというのも実感です。焦りが伝わってしまい、余計に信頼を損ねることがあります。僕がすすめているのは、2週間ほど間をあけてから、面談で聞いた課題に関連する記事や事例を一つ添えて近況報告のメールを送る方法です。断りの理由が単価であれば条件を調整した再提案を、専門性のズレであれば別分野での提案を用意するなど、断られた理由ごとに次の一手を変えることが立て直しの鍵になります。

5. 最初の30日でやる実務手順——棚卸しから初回接触まで

頭では分かっていても、何から手をつければいいか分からないという声もよく聞きます。僕が勧めているのは、30日を4週間に区切って動く方法です。

1週目は棚卸しです。過去5〜10年で名刺交換した相手や取引先の担当者をリストアップします。所要時間の目安は3〜5時間で、思っている以上に人数が出てくることが多いです。2週目は提案書のたたき台作成です。自分の経験を3つの「困りごとへの翻訳」に落とし込む作業で、半日ほどかかります。3週目は紹介依頼の連絡です。1件あたり電話やメールで15分程度、10件連絡すれば1〜2件は面談につながる、というのが体感の目安です。4週目は面談の実施と条件のすり合わせに充てます。この4週間サイクルを1回で終わらせず、2〜3周続ける前提で動くと、途中で心が折れにくくなります。実際、1周目でゼロ件でも、2周目に棚卸しリストを見直して声をかけ直した相手から連絡が来た、という例も少なくありません。

6. 最初の契約条件——安く受けていいのか、という問い

実績がない段階では、相場より低い単価で受けることも一つの選択肢だと考えています。ただし、それを続けてしまうと単価が固定化し、後から上げにくくなるという副作用があります。僕がおすすめしているのは、最初の契約を3ヶ月や半年といった期間限定にし、契約書に更新時の単価見直し条項を明記しておくことです。顧問料の相場については別記事でも触れましたが、最初の条件はあくまで「実績を作るための入口」であって、そのまま定着させる前提にしないことが大切です。

また、安く受ける代わりに成果指標を明確にしておくことも有効です。「3ヶ月で採用面接のフローを整備する」といった具体的なゴールを合意しておけば、更新時の単価交渉が「実績に基づく交渉」になり、感覚論で押し引きする必要がなくなります。逆に成果指標を決めないまま安値で契約してしまうと、更新時に「今のままでいいのでは」と言われてしまい、単価が動かせなくなるケースも見てきました。

(結論)

顧問業の最初の1社は、営業テクニックよりも、これまでの関係の棚卸しと課題の翻訳力で決まります。紹介・マッチング・発信のどれを選ぶにせよ、経歴をそのまま語るのではなく、相手企業の困りごとに翻訳し直す作業が必要です。そして最初の契約は、単価の高さよりも、更新時に見直せる余地を残しておけているかどうかが、その後のキャリアを左右します。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 顧問業を始めたばかりで人脈がない場合、どうすればいいですか

人脈が薄い場合はマッチングサービス経由が現実的な選択肢になります。ただし面談化後の体感成約率は紹介の3割前後に対してマッチングは1割前後と低く、面談化までに2〜4ヶ月かかることも珍しくありません。並行して、これまでの業務で名刺交換した相手に近況報告を兼ねて連絡を取り直すことをおすすめします。人脈は新しく作るより掘り起こすほうが早く動きます。

Q. 最初の契約は相場より安くても受けるべきですか

実績作りを目的にするなら、相場より低い単価で受けること自体は選択肢としてありだと考えています。ただし3〜6ヶ月など期間を区切り、契約書に更新時の単価見直し条項を入れておくことが前提です。安い条件がそのまま定着してしまうケースを何度か見てきたので、最初から出口を決めておくことが重要です。

Q. 面談で断られた後、どう動けばいいですか

断られた直後の連絡は逆効果になりやすいので、まず2週間ほど間をあけます。その上で、面談で聞いた課題に関連する記事や事例を一つ添えて近況報告のメールを送ると、再検討につながることがあります。断りの理由が単価であれば条件を調整した再提案、専門性のズレであれば別分野での提案に切り替えるなど、断られた理由ごとに次の一手を変えることが立て直しの鍵になります。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

この記事を、eBookで持ち帰る。 本記事をスライド形式のPDF(16:9・全13ページ)に再構成しました。お名前とメールのご登録だけで、その場でダウンロードできます。
無料でPDFを受け取る →

自分の現在地を、まず知る。

「顧問クエスト 適性診断」(無料)で、いま狙える職域タイプが分かります。個別に相談したい方はキャリア面談へ。

適性診断をやってみる → キャリア面談をする →

あわせて読む

仕事のモヤモヤ、AIに話してみませんか

転職するかどうかは、あとで決めて構いません。
「キャリアのたね」は、対話しながら引っかかりを整理して、あなたの強みを言葉にしていくサービスです。

話しはじめてみる(無料)

登録不要・無料。求人の紹介から始めることはしません。運営:ポテンシャライト