役職定年後にキャリアが終わらない人の共通点
- 役職定年後も稼働し続ける人は、肩書きでなく「再現できる機能」で自分を語れる人である。
- 役職定年後の処遇は現役時代の6〜7割程度まで下がる体感が多く、社外での顧問稼働がその差を埋める選択肢になる。
- 準備は役職定年の1〜2年前から始めるのが理想で、経歴の棚卸しが最初の一歩になる。
「肩書きが無くなったら、自分には何も残らないんじゃないか」
これは、55歳を目前にしたある製造業の部長職の方が、面談の中でぽつりと漏らした一言です。皆さま、もし来月から「部長」という肩書きが外れて、平社員と同じ待遇に戻るとしたら、自分の価値をどう証明しますか。この問いに即答できる人は、実はそう多くありません。
ですが僕がこれまで見てきた中で、役職定年後もキャリアが終わらず、むしろ社外で顧問として活躍の場を広げていく人には、はっきりとした共通点があります。
0. 前提:役職定年は「能力の喪失」ではなく「役割の喪失」
誤解がないように申し上げると、役職定年で失われるのは能力ではなく役割です。多くの日本企業では55歳前後で管理職の役職手当や権限が外れる制度が今も残っており、厚生労働省の調査でも、65歳までの雇用確保措置を講じる企業は9割を超える一方、処遇そのものは現役時代より下がる設計が一般的です。ただ、ここで多くの人が勘違いするのは、「役職が外れる=自分の価値が下がった」と受け取ってしまうことです。役職と能力は、本来まったく別の軸にあります。
1. 共通点その1:肩書きでなく機能で自分を語れる
キャリアが終わらない人は、「〇〇部長でした」ではなく、「新規事業の立ち上げを3回、うち2回を黒字化させました」というように、自分がやってきたことを機能として語れます。これは謙遜でも大げさでもなく、単に事実を解像度高く言語化できているかどうかの差です。逆に、肩書きの説明に終始してしまう人は、社外の人間からすると「その人が具体的に何をしたか」が見えず、評価のしようがありません。
2. 共通点その2:現役時代から「外の人」との接点を持っていた
2つ目の共通点は、社外との接点です。業界団体の勉強会、取引先との個人的な信頼関係、あるいは若手時代からの人脈。役職定年をきっかけに慌てて動き出す人と、現役時代から社外との接点を細々とでも保ってきた人とでは、いざ顧問という働き方に踏み出すときのスタートラインがまったく違います。僕の周囲の実感で言うと、社外接点を長く保ってきた人のほうが、最初の顧問契約を得るまでの期間が体感で半分以下に短縮される印象があります。
2-1. 面談でよく聞く失敗パターン
面談でよく聞くのが、「社内の仕事に集中しすぎて、気づいたら社外に誰も知り合いがいなかった」というパターンです。これは決して怠慢の結果ではなく、むしろ真面目に本業に打ち込んできた証でもあります。ただ、顧問という働き方は紹介や口コミで案件が生まれることも多く、社外接点のゼロからの再構築には相応の時間がかかります。
2-2. 今から間に合わせる方法
もし今、社外接点がほとんどないと感じているなら、業界団体のセミナーに月1回顔を出す、あるいは同業他社の元同僚と半年ぶりに連絡を取ってみる、といった小さな行動から始めれば十分間に合います。顧問マーケットは、派手なネットワーキングより、細く長い信頼関係の積み重ねで動く市場です。
3. 共通点その3:「教える」でなく「一緒にやる」姿勢がある
3つ目は姿勢の問題です。大企業出身の方に多いのが、無意識のうちに「教えてあげる」という上から目線が滲んでしまうケースです。中小企業の経営者は、忙しい合間を縫って顧問と向き合っています。本当に重宝されるのは、講釈を垂れる人ではなく、現場に入り込んで一緒に手を動かしてくれる人です。この姿勢の差は、面談の最初の30分で経営者に見透かされます。
4. 数字で見る「役職定年」という現実
体感値になりますが、僕が面談してきた50代後半のビジネスパーソンのうち、役職定年前に社外での稼働イメージを具体的に持てていた人は、感覚的に2〜3割程度でした。残りの7〜8割は、役職定年が現実になってから初めて次のキャリアを考え始めます。これ自体は自然なことですが、準備期間が短いほど、条件面で妥協せざるを得ない場面が増えるのも事実です。本物の準備は、思っているよりずっと早い段階から始まっています。
5. もう一つの共通点:家族との合意形成
意外に見落とされがちですが、役職定年後も活躍を続ける人には、家族との合意形成を早めに済ませているという共通点もあります。収入が一時的に下がる可能性がある働き方への転換は、本人だけでなく家計を共にする家族の理解が欠かせません。僕が面談で見てきた限り、パートナーへの説明を先送りにした結果、いざ顧問契約の話が具体化した段階で足踏みしてしまうケースが少なからずあります。早い段階で「収入がどう変化しうるか」「働き方がどう変わるか」を共有しておくことが、動き出すタイミングでの迷いを減らします。
5-1. 収入の変動を家族にどう説明するか
顧問という働き方は、正社員時代のような毎月一定額の給与とは異なり、契約社数や案件の有無によって月々の収入が変動します。この変動を家族に説明する際は、「年収ベースでは現役時代の何割を目指すか」という大枠の目安を共有しておくと、日々の収入の波に一喜一憂せずに済みます。
6. 共通点その4:小さく試す発想を持っている
もう一つ、キャリアが終わらない人に共通するのが、いきなり大きく踏み出すのではなく、小さく試す発想を持っていることです。役職定年と同時に会社を辞めて独立するのではなく、在職中や再雇用期間の副業として、1社だけ小さな顧問契約を試してみる。この小さな一歩が、実際に社外で通用するかどうかを確かめる貴重な実験になります。いきなり退路を断ってしまうと、うまくいかなかったときの心理的な負担が大きくなりすぎ、冷静な判断ができなくなるリスクがあります。
6-1. 在職中の副業ルールを確認する
近年は副業を認める企業も増えていますが、就業規則で競業避止や兼業の届出義務が定められている場合がほとんどです。動き出す前に、自社の副業規定を必ず確認し、必要な手続きを踏んでおくことがトラブルを避ける第一歩になります。
7. なぜ「早すぎる準備」は存在しないのか
僕がよく受ける質問に、「まだ40代だが、顧問という働き方を意識するのは早すぎるか」というものがあります。結論から言うと、早すぎるということはありません。むしろ、40代のうちから社外との接点を意識的に持ち、自分の経験を言語化する習慣をつけておくことが、50代後半になったときの選択肢の広さに直結します。準備は、必要になってから始めるものではなく、必要になる前から積み重ねておくものです。
8. 健康管理という地味だが重要な準備
意外と語られませんが、顧問として長く稼働し続けるためには、体力・健康の管理も欠かせない準備の一つです。役職定年後は、通勤や規則正しい勤務からいったん解放される分、生活リズムが崩れやすくなります。複数社を掛け持ちしながら安定して価値を出し続けるには、若い頃以上に自己管理への意識が求められます。
8-1. 無理をしないペース配分
複数社を掛け持ちする働き方は自由度が高い反面、自分でペースを管理しなければ際限なく稼働が膨らんでしまう危険もあります。週の稼働日数に上限を設ける、休息日を固定するなど、雇用契約下では会社が担ってくれていた自己管理を、自分自身の手で設計し直す意識が必要です。
9. 今日からできること
白紙のメモを1枚用意して、「この5年で、自分が誰かに感謝された瞬間」を3つ書き出してみてください。所要時間は20分ほどです。感謝された瞬間の裏には、必ずあなたの「機能」が隠れています。それが、社外に対して語るべき自分の価値の原型になります。
(結論)役職定年は終わりではなく、働き方の切り替えポイントです。肩書きを手放したときに何が残るかは、今日からの準備次第で大きく変わります。皆さんいかがでしたでしょうか。ではまた次の記事でお会いしましょう。今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. 役職定年後の年収はどれくらい下がりますか?
企業や制度によって幅がありますが、基本給・役職手当を含めて現役時代の6〜7割程度まで下がるケースが体感として多いです。厚生労働省の高年齢者雇用状況等報告でも、役職定年後の処遇低下は多くの企業で共通する制度設計として確認できます。
Q. 社内に残るのと社外で顧問を目指すのはどちらが良いですか?
どちらが正解というものではなく、社内に「裁量を伴う役割」が残っているかどうかで判断すべきです。肩書きだけ残って裁量が縮小した状態が続くなら、経験を社外で発揮する選択肢を早めに検討する価値があります。
Q. 顧問として動き出す準備は何歳から始めるべきですか?
役職定年の1〜2年前から動き出すのが理想です。在職中に経歴の棚卸しと人脈の再整理を済ませておくと、実際に社外で稼働を始めるタイミングでの空白期間を最小化できます。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。